組織委員長挨拶
2015 年 3 月 1 日
睡眠は元来脳機能のひとつとして基礎研究の対象であるとともに神経学と精神医学のボーダーランドに位置付けられていました。その後、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)を利用することによって生理的事象を数値化することができるようになり、さらに常時監視PSGという睡眠を目の当たりにする方法も諸外国ではシステム化して実施されるようになりました。時代を経て研究が進むとともにSASはcommon diseaseとしての地位を確立し、循環器疾患や糖尿病といった生活習慣病の発症や悪化に大きく関わっていると認識されています。日本では認知度は低いですが、SAS以外にも睡眠関連疾患は数多く知られており、ナルコレプシー、睡眠不足症候群などの眠気を引き起こす病態、睡眠中に異常な行動が起こるパラソムニア、そして原因を一つに特定できない場合が多いいわゆる不眠症といった睡眠の問題に対応できる人材を育成することは社会の急務です。また、質の良い睡眠を各人にとって十分な時間と適したタイミングで取ることは、健康維持・増進に広くかかわっており、睡眠生理やスリープヘルスの知識をもつことはヘルスサイエンスにかかわる者にとっては必須となってきました。
ISMSJは、睡眠に関連するあらゆる職種を対象に、発展しつつある睡眠医学の学びの場として設立され、これまで種々の違ったテーマを各回の学術集会で展開してきましたが、今回は本来の「脳機能としての睡眠」に立ち還り、睡眠臨床にとって基本中の基本である生理学的手法を見直すことをテーマとしました。
この観点から、特別講演にはイタリアはボローニャよりDr. Federica Proviniをお招きすることになりました。Dr Proviniは、1986年にFatal familial insomniaを最初に記載したProf. Elio Lugaresiらの伝統を継ぐ睡眠研究グループに属されており、神経生理の手法を用いた数々の研究を行ってこられています。睡眠医学の共通項であるPSGのraw dataから脳へどのようにアプローチできるのかを考える良い機会となることでしょう。多くの皆様のご参加を心から歓迎する次第です。
立花 直子