”William C. Dement先生のご逝去に寄せて”
2020 年 6 月 20 日
2020年6月17日、“米国睡眠医学の父” William C. Dement先生が逝去されました。
Dement先生の業績は、1950年代のChicago大学Nathaniel Kleitman博士とのREM睡眠や夢見の生理学的研究にはじまり、ナルコレプシーの症状がREM睡眠の異常で生じることの発見や、その診断法としてのMSLTの確立など、枚挙にいとまがありません。何より睡眠を直接観察しながら脳波や筋電図などでつぶさに記録していく手法を応用し、それを研究室から臨床の世界に広め,今日までその重要性を伝え続けてこられたことが、Dement先生の最大のご功績といえるでしょう。
Dement先生はまた、American Academy of Sleep Medicine(AASM)の前身団体やSleep Research Societyの設立,Sleep誌の創刊、Stanford大学睡眠医学部門の発展、さらには睡眠の価値を啓発し睡眠研究・医療を推進する国家プロジェクト“Wake Up America”にも力を尽くされました。今日我々が知る睡眠医学の共通言語やコミュニティの多くは、先駆者としてのDement先生のアイデアや理念、ご努力の上に成り立っています。AASMウェブサイトの追悼ページには、これまでのご足跡やインタビュー動画が掲載されています。またWorld Sleep Societyウェブサイトには全世界から追悼の声が寄せられています(いずれも外部リンク)。
ISMSJの理念のひとつにPSGを共通言語とする多職種でのチーム医療づくりがありますが、その源流はDement先生ほか先駆者の方々が確立された睡眠の観察手法にあります。それを後世まで伝えていくことが、現在睡眠医学に関わる者の使命と考えます。ご冥福を心よりお祈りいたします。
日本臨床睡眠医学会(ISMSJ)