モディオダール処方登録制 その後
2021 年 12 月 20 日
ご存知のとおり,2021年4月1日よりモディオダール適正使用基準の改訂にともない,処方登録制にかかる確定診断医師の要件が追加になりました。それから半年以上が経過し,具体的にどのような方が確定診断医師として登録でき,どのような方が依然として登録できず制度から取り残されているか,次第にわかってきました。
【今回の変更点】
まず今回の改訂における変更点を確認していきます。詳しくはモディオダール適正使用位委員会HP(https://www.modiodal-tekiseishiyou.jp)で適正使用基準原文をご確認ください。
①「5.1.1 確定診断を行う医師」の要件1
従来の日本睡眠学会専門医要件が「確定診断医師Ⅰ」となりました。そして日本睡眠学会専門医でない医師向けに「確定診断を行う医療機関として既に登録された施設において睡眠障害の診療に従事している専門医制度を有する学会の専門医」という要件で,有効期限を5年間とする「確定診断医師Ⅱ」が新設されました。
②「6.1 医師の申請・登録手順」の項目1
「確定診断医師Ⅱ」の書面申請方法が追記されました。
③「9 登録情報の変更及び登録削除」
「確定診断医師Ⅱ」を更新しない場合の登録削除について追記されました。
④「15 様式一覧」
申請医師が睡眠障害の診療に従事していることについての確認書(様式-C1)が追加されました。
【新たに確定診断医師として登録できるようになった方】
今回の改訂では,新たに「確定診断医師Ⅱ」が設けられ,日本睡眠学会専門医でない医師にも確定診断医師の門戸が開かれました。「確定診断医師Ⅱ」になるための条件については,「確定診断を行う医療機関として既に登録された施設において睡眠障害の診療に従事している専門医制度を有する学会の専門医」とされました。
「確定診断を行う医療機関として既に登録された施設」に関しては,5.2.1に記載があります。これに従えば,確定診断医師Ⅱの申請希望者は,少なくとも「日本睡眠学会専門医療機関A型(睡眠障害の全般(ICSD-2又は ICSD-3による)を診療の対象とし,睡眠ポリグラフ検査(MSLTを含む)を年間50 症例以上及びMSLT検査を年間5症例以上行えること)及びそれに準じる医療機関」に所属している必要があります。
まとめると「日本睡眠学会専門医療機関A型及びそれに準じる医療機関として既に登録された施設」に所属する「専門医制度を有する学会の専門医」が,様式-C1と様式-D1を用いて申請し,認められれば確定診断医師Ⅱになることができます。なお様式-C1は申請者が現在睡眠診療に従事していることを施設長/所属長が証明する書類で,様式-D1は申請者本人が記載する申請書・経歴書・誓約書ですが,いずれもこれまでの睡眠診療経験に関わる証明項目はありません。
【依然として確定診断医師として登録できない方】
制度設計上,確定診断医師Ⅱの希望者は,これまでの睡眠診療経験にかかわらず「日本睡眠学会専門医療機関A型及びそれに準じる医療機関」に所属していないと申請することができません。
【改訂後に残る制度上の矛盾点】
改訂後の適正使用基準を文面通りに解釈すると,「A型及びそれに準じる医療機関」に所属する「専門医制度を有する学会の専門医」であれば,現在睡眠診療に従事していれば,経験年数に関わらず確定診断医師Ⅱを申請できることになります。一方,現在「A型及びそれに準じる医療機関」に所属していない方は,どれだけ長年の睡眠診療経験があろうとも,確定診断医師Ⅱを申請できません。
たとえば,これまで日本睡眠学会に関わりなく睡眠診療に従事されてきた方,現在の施設や部門に日本睡眠学会専門医がいない方にとっては,現在の制度設計では確定診断医師Ⅱであっても登録のハードルが高い状況です。また新規に睡眠診療部門や睡眠クリニックを開設された方にとっても,「A型に準じる医療機関」を申請するためにMSLT年間5件をこなす必要がありますが,仮に申請前段階で行ったMSLTで特発性過眠症/ナルコレプシーと診断した場合,当該患者へのモディオダール処方をどうするのか,適正使用基準には記載がありません。
このように改定後の適正使用基準にも依然として矛盾が残されており,今後もさらなる改訂が望まれます。
【「A型及びそれに準じる医療機関」ではない施設の医師が確定診断医師Ⅱを申請するには】
制度設計に沿えば,まず「A型に準じる医療機関」を申請し,それが認められ次第,確定診断医師Ⅱを申請する手順になるようです。実際には施設/申請希望医師によりさまざまな状況があるため,直接モディオダール適正使用委員会にメールや電話で問い合わせ,認定条件や必要書類を確認しながら手続きすることをおすすめします。
特に「A型に準じる医療機関」の申請については,様式-A1で過去3年間の睡眠ポリグラフ検査症例数やMSLT検査症例数,診療の対象としている主な“睡眠障害”の症例数などの項目を埋めて申告する必要がありますが,状況によってはすべて埋められないこともありえます。その場合は,施設の特性を付記したり,日本睡眠学会以外の睡眠医学認定(国際的な専門医/技士認定の証書写し)を添付するなど,あらゆる手段で今後ご自身が申請施設で過眠症を十分適切に診療できることを証明していくことがおすすめです。
日本臨床睡眠医学会(ISMSJ)理事 小栗 卓也