日本臨床睡眠医学会
~日本に境界なき睡眠医学を創る集い~

サイト内検索▶

第1回 ISMSJ学術集会

2009 年 9 月 29 日

「第1回 ISMSJ学術集会」レポート

睡眠医療は第一に患者さんのため、そしてそれを担う医療者,それを支える研究者に役立つ団体が新たに必要ではないか。私が2000年に米国留学中、立花直子先生も偶然に隣のラボに留学中でした。ひょんなことから意気投合したときから9年たって、第1回のISMSJ学術集会に至りました。もちろん、これまでにはSleep Symposium in Kansai(SSK)を含むいくつもの重要な企画と大勢の先生方の参加協力があったのはご承知の通りです(http://www.ismsj.org/step)
前日の第1回睡眠医学コーディネーター講習会を経て、今回の学術集会はSleep technical courseから始まりました。開始早々、マイクがハウリングを起こしてしまい、とても困ってしまいました。結局、参加者が持参したICレコーダからのノイズが原因とわかるまで、手の空いている関係者が総出で対処しました。

Sleep technical course 1ではCPAPを管理するときのさまざまな工夫が報告されました。こうしたベスト・プラクティスは自らの機関での実践に必ず役に立つと思われます。Sleep technical course 2では糖尿病の診療に睡眠医学の知識や技能をどうすれば活かせるか、双方の専門家がどのように協力できるかについて、関電病院・睡眠関連疾患センターの実践例が紹介されました。睡眠医療の最先端を走っているこの機関であっても、実際には難しい点がいくつもあると聞きます。であっても、一つのモデルケースがあるないでは後発組にとって大違いのはずでしょう。

Luncheon seminarでは睡眠時無呼吸による健康障害の背景を探る実験的な研究の成果がLena Lavie先生から発表されました。酸化ストレスを中心に話された内容のすべてを理解するのは難しかったかもしれませんが、基礎科学をも網羅することがISMSJの間口の広さと言えます。

Pros & Consに向けて、発表者の人選は慎重に行われました。というのも、学術的に正しく、論理的なプレゼンができることのほかに、このような、ある意味、戦いの場でうまく振る舞い、かつ楽しめることが重要な条件であったからです。OSAS診療におけるPSGの役割に関するテーマではProsもConsもそれぞれポイントのついた発表がなされましたが、PSGという高コストのツールだからこそ,それに見合った、より上質な(診療上有益な)所見を得る必要があるという、本質的には同様の考え方が示されたように思いました。PLMDに関するテーマではPLMDとPLMSとの混同について留意すべしと強調されました。用語に対する甘さはたとえば、「糖尿病の患者さんが・・・」を、ついうっかり「糖尿の患者さんが・・・」と言ってしまうのにもあてはまります。糖尿病の専門家にとって、それは聞くに耐えないと知りました。

ポスターセッションは、7つの領域について合計37題の発表がありました。
盛りだくさんな内容で、ポスターを十分に見る時間がないという感想も多く聞かれているため、各座長によるまとめもご覧下さい。

Peretz Lavie先生による特別講演は「History of sleep apnea: from an exotic disease to public health problem」と題して行われました。65才以上のOSAS患者では昼間の症状が特段なければCPAP治療は不要かもしれないことをご自身の死亡率データにもとづいて紹介されました(参照:Lavie P, Lavie L. Unexpected survival advantage in elderly people with moderate sleep apnoea. J Sleep Res. 2009 Aug 3. [Epub ahead of print])。これはインパクトがありました。

学術集会の終了後、Lavieご夫妻といっしょに神戸に夕食に出かけました。その際、Peretz Lavie先生が今回の組織委員長であった立花先生にプレゼントを渡すときに、「Nana(立花先生のニックネーム)のpioneering workを祝して」と言われたこの一言がすべてを物語っていると感じました。つまり、全員参加の手作りというモットーのもと、オリジナルで新しさを求めていることを深くご理解いただけたと思いました。

学術集会の翌日はLavie夫妻と神戸の異人館界隈、摩耶山のハーブ園を楽しみました。暑いなか、坂道をふーふー言いながらも、よい時間を過ごせました。同行している最中、このご夫妻はどなたかのカップルに似ているとずっと悩んでいました。そして、帰りの新幹線のなかでふと気づきました。中尾彬・池波志乃夫妻です! 博識である中尾氏が実は池波さんに頭があがらない姿がどことなく似ているようにみえました(余談になりました・・・)。

来年9月3-5日に開かれる東京での第2回ISMSJ学術集会で、またお会いしましょう。

(労働安全衛生総合研究所 高橋正也 記)

2009年9月5日(土) プログラム
9:05~10:20  Sleep technical course 1*
 (睡眠医学コーディネーター講習会を兼ねる)
 CPAP外来の実際-医師の工夫・技師の工夫・システムとして
 の工夫-
 【座長】天理市立病院 内科 大西徳信
 【プレゼンター】大西徳信、千崎香、谷口充孝、田中まなみ
10:30~11:45  Sleep technical course 2*
 (睡眠医学コーディネーター講習会を兼ねる)
 糖尿病診療において睡眠医学は何ができるか?
 【座長】関西電力病院 睡眠関連疾患センター 立花直子
 【プレゼンター】矢部大介、丸本圭一、立花直子
11:50~12:50  Luncheon seminar
 (睡眠医学コーディネーター講習会を兼ねる)
 【座長】関西電力病院 院長 清野 裕
 Oxidative stress and inflammation in metabolic
 syndrome and cardiovascular morbidity in sleep
 apnea
 Dr Lena Lavie (Technion-Israel Institute of
 Technology)
13:00~13:30  総会および睡眠医学コーディネーター講習会修了式
13:30~14:15  Pros & Cons1*
 【座長】大阪回生病院・睡眠医療センター 谷口充孝
 PSGはOSASの診療に必要である
 大阪大学・保健センター  三上 章良
 PSGはOSASの診療に必要でない
 筑波大学・睡眠学講座  佐藤 誠
14:15~15:00  Pros & Cons2*
 【座長】東京都老人総合研究所・
     高齢者ブレインバンク 村山繁雄

 PLMDは存在する
 東京医科大学・睡眠学講座  井上 雄一
 PLMDは存在しない
 関西電力病院・睡眠関連疾患センター 立花 直子
15:00~15:30  コーヒーブレーク
 (ポスタービューイング・展示ブース見学)
15:30~17:15  ポスターセッション (9階 EX4)
 各演題 発表10分・質疑応答6分
 座長 :
 丸本 圭一(関西電力病院 臨床検査部)
 佐藤 誠(筑波大学 睡眠学講座)
 谷口 充孝(大阪回生病院 睡眠医療センター)
 宮本 雅之(獨協医科大学 神経内科)
 山本 知由(トヨタ記念病院 歯科口腔外科)
 高橋 正也(労働安全衛生総合研究所)
 大木 昇(のるぷろライトシステムズ)
 ポスタープログラムはこちら
 (睡眠技士をめざす方たちのためにPSGのraw dataを
  直接呈示するブロックも設けました)
17:30~18:30  特別講演*
 【座長】東京ベイ・浦安市川医療センター センター長 神山 潤

 History of Sleep apnea: from an exotic disease to
 public health problem
 Prof Peretz Lavie (Technion-Israel Institute of
 Technology)

PeretzLavie
組織委員長
関西電力病院 睡眠関連疾患センター センター長 立花 直子
組織委員(50音順)
市立天理病院 内科部長 大西 徳信
大阪大学大学院歯学研究科 統合機能口腔科学 講師 加藤 隆史
石金病院 副院長 香坂 雅子
東京ベイ・浦安市川医療センター センター長 神山 潤
筑波大学大学院人間総合科学研究科 睡眠学寄附講座 教授 佐藤 誠
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 上席研究員 高橋 正也
大阪大学 子どものこころの分子統御機構研究センター
特任教授
谷池 雅子
大阪回生病院 睡眠医療センター 部長 谷口 充孝
金沢医科大学 医学教育学 准教授 堀 有行
ハムリー株式会社 筑波研究センター
睡眠科学研究所 所長
本多 和樹
関西電力病院 検査部 丸本 圭一
大阪大学 保健センター 准教授 三上 章良
東京都老人総合研究所 高齢者ブレインバンク 研究部長 村山 繁雄