2012年3代目代表挨拶
ISMSJは2008年8月に創設された若さが強味の学会です。医学に関する学会の多くは歴史的に確立した専門分野ごとにまとまっており、会員は医師で構成されています。それぞれの分野には診療上の標榜科があり、守備範囲とする病気も定まっているが故に学会としてのidentityをもつことは容易です。これに対して、睡眠医学は睡眠という複雑で未知のことが多い脳機能を扱うと同時に誰もが一生に一度は経験する睡眠問題というcommon disease/disorderを診療するというプライマリ・ケア的な側面を合わせもっており、どの科の医師が対応するのかという点についてもコンセンサスは得られていません。
日本では、1960年代から終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)という手法を用いて、世界に先駆けて睡眠研究が行われてきました。当時は、「睡眠研究者=Sleep Watcher」であり、脳研究という立場が明確にありました。しかし、時代とともにPSGはより臨床現場で役に立つ形に標準化され、米国では専門の睡眠技士(sleep technologist)というキャリアも生まれ、医師が直接睡眠の検査に従事することは例外的になりました。また、よりよい睡眠をとることは、あらゆる人の健康増進、疾患の治療にかかわってくるため、睡眠とその病的状態についての知識を得、スリープヘルスに関心をもつことは、すべての医療・保健従事者に必要になってきていますが、何を、どの程度、どのように知ればいいのかを学ぶ機会は限られています。
ISMSJは、職種や専門分野を超えて、正しい「睡眠医学」を学べる場をつくり、それを実践する人々が連携しあえる学会を目指しており、その名前の如く、integrate する(異なる複数個のものが対等の立場で交わり総合的な全体像を形成する)ことに重きを置いています。具体的には、「睡眠医学」と「その周辺領域のプライマリ・ケア」とを理解し、全体を鳥瞰できるようになるための学びと、身近な疑問が研究につながるプロセスを経験できる学術集会運営を大きな柱として、今後の活動を推進していきたいと考えています。初心者からベテランまで、会員の皆様方の積極的な関与が不可欠です。日本の医療制度の中で真に生きる睡眠医学をつくっていくという大きな夢を共有していきましょう。
Integrated Sleep Medicine Society Japan (ISMSJ)
代表 立花 直子 (2012-2013年)
代表 立花 直子 (2012-2013年)