第2回 ISMSJ学術集会のCEC対象プログラムの狙い
2010 年 7 月 30 日
現在、日本でRPSGT(registered polysomnographic technologists)資格を取得されている方は、約120人おられます。大部分は、日本で臨床検査技師として病院に勤務されている方ですが、医師も10名混じっています。米国ではRPSGT資格をもっていることは、その人が米国型の睡眠センターやラボで十分に機能することができるという一種の証明であり、就職にも有利であったり、昇給につながったりしますが、この資格を取ればそこで上がりではなく、RPSGTは、その後も引き続き最新の知識と技術を身につけるために学習を続けなければならないということがコンセンサスとなっています。(http://www.brpt.org/ 参照)。そのため、RPSGT資格は、5年ごとの更新が必要であり、その条件として最低50時間の学習が要求され、CEC(continuing education credits)を取得したことでそれを証明するというシステムになっているのです(1時間が1creditに相当します)。北米のRPSGTにとっては、この条件をクリアするのはそれほど困難ではなく、毎年開催されるAAST(American Association of Sleep Technologists)の年次集会に出席すれば、50creditsを取ることは容易です。また、RPSGTの方たちが多くおられる睡眠センターでは、日常的にconferenceが開かれていますので、定期的な分については、あらかじめCEC対象となるように施設側が申請しておくことで、CECが取れます(申請にはお金がかかります)。
一方、日本では、こういったCECが取れる機会が少ないため、多くのRPSGTの方たちは苦労されていると思いますが、一度、なぜ自分はRPSGTという資格を取ったのか、そして、またなぜそれを維持しようとしているのかを自問自答してみて下さい。一部の睡眠専門施設に勤務されている方を除くと、普通の病院では、RPSGTをもっているからといって給料は上がりませんし、睡眠検査ができる人ということでかえって仕事が増えた方もおられるでしょう。したがって、いったんなぜか取ってしまったので、何とかしておきたいという気持ちのみで維持するには、見かけのcost-performanceは悪い資格かもしれません。でも、一度、よく考えてみて下さい。日本では、まだ「睡眠医学」というものが確立していないのです。一般人にも医療従事者にも、「睡眠で困ったときに対応してくれる場所や医師」が見えてきていないのです。さらにその医療を成り立たせるには、PSGが必要であり、そのPSGの担い手が(日本ではまだ確立していない)睡眠技士であり、診療の中で睡眠専門医と呼ばれるには、PSGをどのように利用して、それを解釈するかができなければならない、という米国では当然のことが、理解してもらえていないのが日本の現状です。日本に睡眠医学を確立していくには、RPSGTの人たちが中心となって世の中を変えていくしかないと思います。米国のRPSGTが日本で一般的に考えられている「検査技師」と一番違うところは、検査をするだけではなくて、「睡眠医学」に積極的にかかわり、医師や研究者とともに働き、治療にも関与し、1人1人が職業としてのidentityをつくり、次世代を育てなければならないと強く思ってきたことでしょう。
したがって、今回の学術集会では、米国でもSleep Medicineなる概念がなかった時代から、一貫して睡眠に携わられている方たちをお招きしています。シンポジウムは、基礎的な話で難しいと感じられるかもしれませんが、脳を扱っている以上、毎日のPSGの中に隠れた真実があり、そのすべてはまだわかっていないのだという新たな認識につながれば、うれしいことです。米国では研究施設で働かれる、RPSGTの方も多くおられます。会長講演、特別講演とも「発達」に関連する話ですが、小児において、いかに睡眠が大切か、またそれを社会に伝えていく役割もRPSGTには要求されていることを実感して下さい。そして、専門職向けサテライトセミナーは、睡眠医学で必要とされる技法をどのように伝えていくのかを学んでいただくことを目的としています。したがって、睡眠技士のみならず、睡眠技士といっしょに働く機会のある医師、自分もRPSGTを取ってみたいと思われている医師も対象ですので、RPSGTとして参加される方は、同じ職場の医師を連れてくるのに良い機会かと思います。参加者をISMSJ会員に限定した意味は、こういったISMSJのCECについての見解に共感できる方に便宜を図りたいということからです。したがって、CEC申請のための手数料も取らない方針です。
最後に、CECを取ることは、日本にいても、非常に困難というものではなく、種々のインターネットでの学習等を利用することでかなり楽になります。そういった情報も、この学術集会で伝えられるよう工夫していきます。