日本臨床睡眠医学会
~日本に境界なき睡眠医学を創る集い~

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第2回 ISMSJ学術集会専門職向けサテライトセミナー

2010 年 10 月 4 日

 今回、私は9月5日に開催された『睡眠技士を育てるために』というコースについての参加記を担当させていただくことになりました。私は静岡の総合病院で検査技師をしております。参加した動機というのは、睡眠検査も心電図や脳波検査など他の生理検査と同じように検査から解析までできる技師を育て、PSG検査がAHIという数値のみを算出する検査ではなく、睡眠を総合的に見て行くという本来あるべき正しいPSG検査というものをもっと普及させていかないといけないという思いや、このままでは…という危機感にも似た状況を感じていたからでもあります。

 まず、第一部はSharon先生が今までどんな道を歩んできたのかという導入部分のお話をして下さいました。英語のシャワーを浴び、気を失わないようについていくのに必死でしたが、休憩中に立花先生がおおまかに要点を解説してくださいました。日本では、臨床検査技師が他の検査と兼務という形で睡眠検査に関わっていることが多く、RPSGTをとることでの待遇面などの優遇もほとんどありません。それどころか仕事が増えるだけで更に大変になってしまうことも多いですが、「他の検査にも関わっていることで、睡眠を見て行く上での基礎が自然と身についているのだからもっと自信を持っていいんですよ。」と言って下さいました。日頃から肩身のせまい思いをしている睡眠技士にとってはとても励まされたお言葉でありました。

 そして、第二部ではSharon先生がスライドを使って実際にThe School of Sleep Medicine (SSM) でどのような教育をしているかといったレクチャーがありました。2007年のAASMの新ルールとそれまで使用していた旧ルールとの相違点や、実際に波形を見せて頂き、Scoring eventについての解説をして頂きました。ここのあたりになると、RPSGTを受験した時に勉強したこともあり、Sharon先生の説明して下さっていることがすんなりと頭に入っていきました。英語を母国語としない日本人の私が理解できたということから、睡眠の共通語を獲得することの大切さをあらためて実感することができました。

 そこで時間切れになってしまい、一旦終了ということになりましたが、まだまだ聴きたいこともあり時間の許す人に限って再び別室に移ってSharon先生への質疑応答、施設内での精度管理法などについて番外編コーナーがありました。アメリカでは睡眠技士の解析の後に医師のチェックがあり、その解析結果についてもなぜそのステージをつけたのかディスカッションをし、QCをしているということでした。日本においては、PSG検査や解析は技師のお仕事で、医師はでてきた報告書のAHIの数値のみで睡眠呼吸障害を対象とした診断しかせず、raw dateをチェックをしてくれる施設はまだほんのわずかの施設しかありませんよね?(私があまり知らないだけかもしれませんが。)

 また、日本ではPSGの解析のできる医師は一部の睡眠医学を愛している先生に限られ、私たち技師は、常に本当にこの判定でいいのだろうかという疑問を抱えることも少なくありません。数値ででてくる指標以外の異常部分を医師と共有し、施設内のQCを保つためにも、スコアリングについてのディスカッションは必須で、その為には医師にもPSGの解析に関わってもらう必要があると思いました。日頃のディスカッションの場で議論をし、意見をすり合わせることで更なる成長が望めるし、そういった場がなければそこで成長は止まってしまうのだと思います。そういったアメリカと日本との違いという点をSharon先生に教えて頂き改めてそのためにも睡眠の共通語であるRPSGTを技師と医師が両方で取得することが大事であると強く感じました。

 最後にこのISMSJの『睡眠技士を育てるために』のセミナーに参加して、これは昨年も感じたことですが、ISMSJのセミナーは少人数制で先生との距離が非常に近く、そういった場は他の勉強会や研修会ではほとんどないことで、貴重な体験をさせて頂きました。また、普通であれば、とてもではないですがお会いすることもできなかったであろうSharon先生からのアメリカでの睡眠技士の育て方と言った話を聴く事ができたことは、これからの私の仕事に対する姿勢や、これから睡眠技士を育てるためにしなくてはならないことをあらためて考えさせられたとても充実したセミナーでした。

(掛川市立総合病院  赤堀 真富果 記)
9月5日(日) プログラム
9:30~12:00 専門職向けサテライトセミナー*
「睡眠技士を育てるために
-睡眠医学の基本技法の教育方法を知ろう-」

(共催:フィリップス・レスピロニクス)
【Coordinator】関西電力病院・睡眠関連疾患センター 立花直子
Dr Sharon Keenan (The School of Sleep Medicine, Inc., USA)

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