日本臨床睡眠医学会
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第3回ISMSJ学術集会サテライトセミナー

2011 年 9 月 26 日

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「看護師の立場から」

 私は第3回ISMSJ学術集会サテライトセミナー「睡眠医学コーディネータに必要な技法を学ぼう」に同僚と2人で初めて参加させていただいた看護師です。

 私が睡眠関連疾患と関わるようになったのは3年前、勤務する病院の小児病棟に配属されたことがきっかけです。そこはいわゆる普通の小児病棟とは違い、小児睡眠障害と小児整形外科の患者さんが入院して治療を行う病棟でした。当時の私は睡眠の病気に対する知識をほとんどもっておらず、入院治療の多くを占める「概日リズム睡眠障害」という病名からして何のことかよくわかりませんでした。また、小児科と言いながら、患者さんの年齢層が高いこと(患者さんの多くは中学生、高校生、中には20歳の人もいる)にも戸惑いました。学童期や思春期の患者さんと何をどう話したらよいのかわからない場面が多く、最初のうちは患者さんとまともに会話をすることができませんでした。少しずつ勉強し、経験もして、それなりの看護ができるようになっていきました。しかしそれとともに、私の中に「この病棟で医師や心理士は専門性を発揮して仕事をしているけれど、私は看護師としてどういうことをしているのだろう? この病棟、この疾患における看護とは何だろう?」という疑問が湧きあがり、モヤモヤするようになってしまいました。そんな疑問を約1年前に当院の医師に相談したところ、看護という視点を持って私たちが患者さんと関われるよう、スリープヘルスについての知識を患者さんに教える「すいみん教室」の企画を作ってくれたり、入院患者さんが自宅での生活リズムを自己評価したり改善できるよう看護師がサポートする機会とツールを作ってくれました。(この企画を始めて1年経ち、私たちの病棟に入院する睡眠関連疾患の患者に対する看護が少しずつわかってきた気がしています。)また、その先生がOSHNetの会員であったことから、今回のISMSJ睡眠コーディネータセミナーを薦めてもらいました。セミナーの内容が私の関心に近く、また患者指導に活かせる知識を得られる期待もあって、飛びつくように参加を申し込みました。実はこのセミナーが一昨年にあったことを知り昨年から参加したいと思っていたのです(が、昨年は企画がなく残念でした)。

 前置きが長くなってしまいましたが、今回のセミナーは5つのセッションからなり、睡眠の基礎知識・睡眠疾患、認知行動療法などについて学ぶ構成になっていました。また、参加者全体を職種ごとのグループに分け、少人数でのグループワークを行いながら全体講義で知識や情報を講義する形になっていました。さらに、グループ毎に経験豊富なファシリテータの先生がついてくれ、ときには先頭に立ち、ときにはさりげなくサポートしてくれたことも大きかったと思います。私たちのグループについてくれた足立先生は、終始優しく穏やかでした。このような配慮が行き届いていましたので、初めて参加した奥ゆかしい(?)私でも、時間がたつにつれて受け身ではなく積極的に参加できました。(確かに「このような研修に看護師が参加してもいいのだろうか??」と気後れしていた自分もいたのです!)

 最初の2つのセッションでは睡眠に関する健康相談と医療相談について、参加者一人ひとりが職場の日常業務で思っていることや話題になっていることについて話し合い、さらに事例の検討を行い、全体講義を受けました。その後グループ毎に話し合われたことを発表する時間がありましたが、睡眠技士、医師、歯科医師という職種の違いによって視点や疑問が違うという点がとても興味深く感じられ、同じ睡眠医療に関わっていても患者さんの見え方は違うものだと理解しました。また、たとえば悪夢をみるという訴えに対して、私は概日リズム異常という点から「どうやって良い生活リズムや概日リズムを取り戻していくか」「どのような睡眠環境を整えたらよいか」ということを考え説明してきました。しかし、悪夢をみるという現象の裏には実はレム睡眠行動異常症のような脳の機能異常がある場合があるのだというようなことを教えてもらえて非常に新鮮でした。見せていただいたビデオ画像も記憶に残りました。

 休憩後には睡眠関連疾患に対する認知行動療法をテーマにしたセッションがありました。実は私が一番楽しみにしていたのはこの部分だったのです。でも、正直に言うと、ちょっと難しくて良くわからなかったのと、終わった後に自分の描いていたものと説明されたこととの間にずれがあったので、かえって頭が混乱しました。とても簡単に言ってしまうと、私は、こちらがきちんと理屈を説明すれば、相手はきちんと理解でき行動もできるもの、と思っていたところがありました。しかし実際にはそう簡単にいくものではなく(考えてみればそうなのですが)、いくつもある問題の中からポイントを絞っていく作業、そして絞った問題に対する改善点を見出して行く作業が大切なのだと教えてもらいました。

 最後のほうの「産業現場における睡眠の問題」「診療報酬について」というセッションは、時間も少なくなってきていたため短時間で効率よく説明してもらっていたのですが、私の仕事では触れる機会が少なく耳慣れない内容であったことと、それまでの内容が濃厚であったため私自身が飽和状態になってしまっていて、あまり理解できなかったように思います。
一緒に参加した同僚は、今回のセミナーが、睡眠が関わる疾患の問題を理解する良い機会だったということを以下のように話していました。
 
 「私たちはこどもの睡眠の問題に関わっているため、子どもに慢性的な睡眠異常があると、学校に行けなくなる、勉強ができなくなる、自己肯定感が下がってしまうなどの二次的な問題が起こってしまい、それがとても重大なことだということを理解している。でも成人の睡眠疾患に触れる機会はないので、睡眠の問題がもたらす問題の広さ深さを考えてみることがなかった。講義を聞いて、今自分が睡眠関連疾患になってしまったと仮定してみると、社会人としての責任や自覚があるから、辛いけど仕事を休むことはできないし、眠気を我慢して仕事しないといけないというプレッシャーもでてくるだろう。私に夜間の行動異常があるとしたら家族はとても困るし迷惑するだろう。睡眠の問題は決して夜だけにとどまらず大きな問題につながっていく。そう考えると、治療に来ている患者さんやご家族が感じる『何とかしたい、してほしい』という思いは本当に切実なものなのだろう。」

 同僚の話を聞いていて、私も同じような気持ちになりました。そして、もっと睡眠のことを学び、患者さんの立場に立って、より役に立つコーディネートができる看護を目指したいと思いました。
私にとってははじめて睡眠医学コーディネータというテーマで学習する機会だったので、とにかく面白くて充実感があったことは間違いないのですが、「あっという間に終わってしまった」「もういっぱいいっぱい」という相反する感覚のどちらもが自分に残った不思議な体験でもありました。
 
 日常業務の中で得られる経験は大切ですが、それだけではなく知識を深めることも重要だと改めて思いました。今回の経験を単なる思い出にせず、学んだことの中から日常の看護に生かしていこうと思っています。関係されたみなさま、本当にありがとうございました。
 
 研修会の最後に、堀先生が「小児の睡眠障害についても研修会ができれば・・・」とお話しされていました。次の企画が楽しみです。今回のような研修会があればまたぜひ参加したいと思っています。

(兵庫県立リハビリテーション中央病院 信濃 幸江記)

「口腔外科医の立場から」

 8月28日、学会最後のプログラムの一つであるサテライトセミナーに参加時の感想です。
 
 私は地方病院の口腔外科医で、日常の睡眠に関する仕事は他開業医、院内の神経内科からの紹介で口腔内装置を作成することが主になります。他は入院患者様の不眠といったところでしょう。
しかし、時に睡眠指導で舌痛症の患者様の不定愁訴が消失したり、また障害児の睡眠障害の相談が出たりします。
個人的には自分の子供を母、祖母などに預けると寝かせてる横で大人達がいつもテレビをつけっぱなしで寝て、幼い子供だけがいつもサスペンスの犯人を知っているという情けない話とそういった環境を解決できないジレンマをついに解決できずにいたという過去があったものなので、睡眠環境、指導はとても興味があったところでした。
 
 中途半端な知識と経験で対応できるわけもなく、なんとか専門の治療を受けてもらいたいと思い探すが遠いので行けないという話も多いため、微力ながら何かできないかと考え本来なら同日同じ時間のPSGのスコアリングを学ぶセミナーではなくこちらの受講をお願いしました。

 結果は正解でした。

 内容が盛りだくさんで、学会内容の簡単な総仕上げのように振り返りもでき、少人数で充実したものでした。
内容は睡眠に関する健康相談、医療相談(睡眠関連疾患の病態をポイントをついて説明)、認知行動療法、産業現場における睡眠の問題、診療報酬について、といった内容でした。
 
 最後の診療報酬については時間切れでごく簡単にだけお話がありましたが、よくまとめていただいたと思いました。本当にこの会は先生方が時間と労力を使って情熱的にされている、そして現時点でのより良い睡眠診療を広めたい、そして一方的ではなく色んな人の意見や質問を待っているといった雰囲気が非常に伝わります。現実問題、報酬があまりになければ診療を継続するのはなかなかに難しい。残念ながら口腔外科医にとってはあまり関係がない内容であったのですが、これを知っておくことで今後の展開がかわります。これは重要なことの一つでありました。場合によっては心療内科にお願いできる可能性ができたわけです。

 疾患などは他でも勉強できるとは思いますが、今回は認知行動療法についてのお話があり、これが大変参考になりました。本で読んで理解する、腑に落ちるといった感じには全くならなかったのでもう嫌気がさしていたのです。非常に分かりやすく、勉強のとっかかりができました。が、分かったことはこれは自己学習では習得は難しいということでした。
 
 また産業現場における睡眠の問題では、慢性的な睡眠不足の解消は時間がかかり、簡単には解消しないといったことがデータを交えてお話され、これは軽いショックを受けました。自分にないとも言えない、他の人間もこのようなことからミスを起こすかも知れない。どうすればいいのか?常に疑問が頭をよぎる、そんな内容でした。
 
 他、駆け足で予備校のようにこれでもか、と疾患等のお話があり普段勉強をする時間があまりとれないような状態でもセミナーに出ると頭にだんだんインプットされるような濃い内容でした。

 しかし、今回のセミナーは他のものと異色なものに感じました。内容もそうですが、グループ分けがあらかじめ職種によってされておりました。この学会は睡眠についてあらゆる分野の人間が集まる、まるでチーム医療に近いような印象があります。
 
 当たり前のようで当たり前にはなかった学会で、逆にこれは珍しいと一瞬驚きました。が、まずお話することがなかったであろう同じ口腔外科の先生方とお話ができたのでこれもありがたかった振り分けでありました。
 
 今回の学会全体がまた一段と濃い内容で、これがこの学会費でいいのかと本当に思うぐらいの情報量と講師がならんだのですが、個人的にはこのセミナー単独でもいいぐらいではと思います。是非、内容を減らしてでもまたこのような内容のセミナーをして頂きたいです。
 
 また広く一般の方に睡眠衛生が広まることと、現状の生活に合わせたベターな睡眠改善方法の提案といったものができるようになればと願います。
 
(豊岡病院 口腔外科 青井陽子記)

8月28日(日) プログラム
09:30~13:30
サテライトセミナー
睡眠医学コーディネーターに必要な技法を学ぼう
1)睡眠に関する健康相談
-睡眠の生理の基礎知識を活用します   
2)睡眠に関連した医療相談
-各種睡眠関連疾患の病態を押さえておきましょう
3)睡眠関連疾患に対する認知行動療法  
-医療機関に紹介する前にするべきことがあります
4)産業現場における睡眠の問題
5)診療報酬について

【ファシリテータ】
大阪大学保健センター: 足立浩祥
太田睡眠科学センター: 加藤久美
名古屋市立大学: 小栗卓也
労働安全衛生総合研究所 : 高橋正也
社会福祉法人天心会 小阪病院: 渡辺琢也
佛教大学 保健医療技術学部: 漆葉成彦
関西電力病院 : 杉山華子
金沢医科大学: 堀有行

スリープヘルスや睡眠生理、さらに日本の健康保険下の診療や検査のシステムを実習形式で学んでいきます。睡眠全般について、鳥瞰的に見通すことができ、患者(相談者)と十分にコミュニケーションが取れ、正しく情報発信できる技法を身につけます。