神経生理検査から考える睡眠医学の研修システムとキャリアプラン
2011 年 9 月 21 日
題名として、『神経生理検査から考える睡眠医学の研修システムとキャリアプラン』と銘打っていますが、米国でどのように資格が取れるようになり、どこに就職するといった進路指導や将来設計の説明会などでは当然ありません。米国睡眠医療の最前線を担っておられるProf. Grigg-Dambergerから、御自身がどのようにして今に至るかを、ウィットにとんだスライドと共に紹介していただいた非常に貴重な場でした。
その中で、Prof. Grigg-Dambergerは神経内科医としてトレーニングを受け、今ではてんかんや睡眠(とくに小児)といったところまで手を伸ばされているとのことでしたが、当初はてんかんを主に診療されていたとのことでした。それが、『だれか睡眠しないか』との呼び掛けに対し、すかさず手を挙げて『できます』と幸運の女神を真正面から捕まえに行ったところは、さすがと思いました。
睡眠医療は、米国においても歴史が浅く、ヨーロッパが1960年頃から始まったのに対し、1970年頃からとのことで、当初は教科書もそうそうなく大変だったとのこと。そうはいっても現在では既に神経内科(not a department of internal medicine, but neurology)における一部門として確立しており、日本の神経内科医であるわが身にとっては羨ましい限りでした。というのも、現状の日本では、睡眠外来とはある意味ゴミ箱的な扱いを受けかねない診療部門であり、睡眠時無呼吸だけでない睡眠関連疾患を扱う医者にとって、自身のidentityが浮雲のようでならないからです。加えて米国では、脳波検査を一手に引き受け、かつてんかんや術中のモニター設備をもっている部門と睡眠ラボとが近い位置にあり、両方を経験する機会があることも中枢神経系の臨床神経生理学自体のidentityが見えやすくなっている理由かと思いました。
Prof. Grigg-Dambergerの話は自身の歩んだ道の紹介にとどまらず、『深く静かにICSD-Ⅲ作成計画潜航中』、『下肢静止不能症候群で鉄ネタを通せる雑誌は?』、『睡眠時の異常な行動×夜間PSG=てんかん?』 など多岐にわたっていました。
今回のMeet the Professorは、睡眠とは脳の活動の一つであり、それによって睡眠は成り立つということを自覚しなおした場でありました。
お話の間、Prof. Grigg-Dambergerは、常に大変ゆっくりと聞き取りやすく話されており、その心遣いが非常にありがたかったです。翻って十分聞き取れなかったわが身を恥じ入るばかりでした。
最後に、この文章を読んでいただいた方にProf. Grigg-Dambergerから頂いた言葉を贈りたいと思います。
『Hope I have not put you to sleep.』
(徳島大学医学部 神経内科 谷口浩一郎 記)
8月26日(金) プログラム | ||
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18:00~19:30 Meet the Professor |
テーマ:神経生理検査から考える睡眠医学の研修システムとキャリアプラン 【コーディネーター】立花直子 University of New Mexico:Prof.Madeleine Grigg-Damberger |