組織委員長挨拶
2011 年 8 月 1 日
「睡眠医学」という名称から「睡眠の病気を診断・治療する」という狭い役割を想像しがちですが、米国ではsleep medicineの守備範囲は広く、睡眠のメカニズムを解明する研究に始まり、社会に対して睡眠の重要性を啓発する活動まで、人々のより健康な眠りと目覚めにつながることすべてが含まれています。
Integrated Sleep Medicine Society Japan(日本臨床睡眠医学会)では、不眠、眠気などを訴える方々に対して、各保健医療職がチームを組んで全人的にどのようにアプローチしアドバイスや診療指針をたてるかを学ぶ場を提供することを大きな柱の一つとしていますが、その「学び」の中には睡眠生理とスリープヘルスという共通語を皆が身につけるという命題が含まれています。
現実にも、医師、看護師、検査技師、保健師及びそれに準ずる保健医療職にある方は、職場や地域、医療・介護施設など様々な現場で睡眠に関する相談や問題を扱う機会が増えてきています。
しかし、この方々に必要な教育プログラムは日本にありませんでした。睡眠時無呼吸症候群などの特定の疾患の有無を調べるための「検診」のノウハウではなく、統合的な立場で「睡眠」を学ぶ場を提供したいと考えています。
第3回ISMSJ学術集会は、会員のアクセスを重視し神戸にもどってきました。今回のテーマは、「睡眠関連疾患の診療の標準化に向けて」です。諸外国と比べて進んでいない医療機関の機能分化と不備の多い診療報酬制度のなかで、「患者中心の睡眠医学を確立してゆこう」という秘めたる思いが、このテーマにはあります。
東日本大震災と原子力発電所災害という危機の中で、なでしこジャパンがワールドカップで優勝し日本を元気づけてくれたように、ISMSJという睡眠医学を学び交流の場を持つ私たちは、睡眠に関連する生理・病態を鳥瞰し、健康増進や睡眠関連疾患の診療を担う人材を育成し日本の「元気」に貢献できればと思います。
皆様とともに、有意義な3日間となることを祈念いたしております。
金沢医科大学 医学教育学 堀 有行